「父親」が「犬」になったほんとうの理由
不純愛トーク 第218夜
「未婚率」上昇の背景には、社会全体の清潔志向などが影響した「草食化」の傾向がある。今回は、その「草食化」を生み出す原因のひとつに、《母権の拡大》があるのではないか、という話をしてみます――。
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AKI 前回は、男女の「恋人なし率」が上昇している原因を追究したんでしたよね。
哲雄 ハイ。世の中全体が「無菌化」されて、そんな中で、「ヒト」という動物は、重要な性的信号である「フェロモン」を作り出す能力も、感知する能力も、退化させつつあるのではないか。意識の発達段階が、「潜伏期」レベルに留まっていて、特定の異性を求めるようになる「性器期」への発達が不十分なのではないか――などを、その原因として指摘させていただきました。
AKI 家庭や社会が「清潔」を志向するようになったことが、大きく関与しているかもしれない、というご指摘もありました。
哲雄 ウン。その家庭や社会の影響という点で言うと、もうひとつ、看過できない問題があります。
AKI 何でしょう?
哲雄 キミは、よく「かわいい」という言葉を口にしますよね?
AKI ま、それほどでも……。
哲雄 い、いや、キミのことではなくて、他人を評価する言葉として、キミたちはよく「かわいい」を使うよね――ということなんだけど。
AKI そりゃ、よく使いますよ。「かわいい」は、私たちの大事な価値基準のひとつになってますから。それが何か……?
哲雄 その基準を満たして欲しい――と、キミたちは友人やカレ氏にも、「かわいくあること」を求めたりするんじゃありませんか?
AKI そ、そうですけど……。わたくし、哲ジイにも「かわいいジジイ」でいてほしい――と、常々、思っているんでございますよ。
哲雄 その件ならば、ご辞退申し上げます。それでね、その「かわいくいてほしい」を、親が子どもにも求める、教師は生徒に求める、男が女に求める、女が男に求める、そして、社会全体がその構成員に対して求める。さて、その結果、どうなるか?
AKI ま、みんな、かわいくあろうと努力しますわねェ。
哲雄 でしょ? でしょ? ここが問題、お立ち会い! 「かわいくあろう」とする男が、彼女をいきなり叢に押し倒したりするか?
AKI しませんよ、そんなこと。かわいくないじゃないですかぁ。
哲雄 社会の仕組みに矛盾を感じて、国会に石を投げたりするか?
AKI ま、しないでしょうね。「かわいい人」は、けっこう従順ですから。
哲雄 ヒゲを伸ばしたり、胸毛をチラつかせたりするか?
AKI しませんって。そういうのは、濃すぎて受け付けない……てか、いまの子に言わせると、「キモい」のひと言だと思いますよ。
哲雄 キモい……? ああ、なんという愚かで醜悪な日本語でありましょう。そう言えば、つい数年前、どこぞのお寺の裸祭りのポスターを「キモい!」のひと言で駅から撤去させた女たちがいましたよね。
AKI ああ、覚えてます。でも、あれ、私もキモかったですよ。
哲雄 私が問題視するのは、そこなんです。「かわいい」という価値観の中には、「性的なもの」を排除しようとする心理的動機が含まれている。そして、もうひとつ、「かわいい」が成立するためには、「自分にとって無害である」が大前提となる。すると、どうなると思う? 親や友人や社会から「かわいい」という評価を得ようとする人間は、どういうふうに自分のキャラを作り上げていこうとするでしょうか?
AKI 「いい子」になろうとする……かな?
哲雄 だよね。まず、自分を評価する立場にいる人間、ま、たいていは親とか教師とか職場の上司だったりすると思うんだけど、そういう人間に対して従順であろうとするよね。たまに反抗することもあるかもしれないけど、せいぜい「すねている」ぐらいに留めようとする。そして、もうひとつ。恋愛に関しては、こっちのほうが重大だと思うんだけど……。
AKI わかった。性的なニオイを消し去ろう――とするんですね?
哲雄 そう。ヒゲを剃り、ムダ毛を処理し、皮脂を拭い取り、体臭を消し、キミたちが口にする「キモい」に該当しないように、男はオスであることを、女はメスであることを、極力、包み隠そうとします。
AKI そうかぁ……。哲ジイは、それが「恋人なし率」を高めている原因のひとつだと思ってるわけですね?
哲雄 ハイ、思ってます。そしてね、この「かわいい」を基準にして作られる人間関係の中では、「恋愛」が成立しにくくなるばかりではなく、いろんな問題が発生してしまうんですよね。
AKI たとえば?
哲雄 いつまでも、親に寄生=パラサイトする「自立できない子どもたち」の問題。俗に「草食化」と呼ばれる性的欲望の低下の問題。そして、男性性、女性性を確立できないまま自我を育ててしまう「トランスジェンダー」の問題。これらの問題の背景にも、「かわいい」に価値基準を置く思考形式が、多かれ少なかれ、関与しているような気がするんです。
AKI なんだか、哲ジイ、ずいぶん「かわいい」を敵視してるような気がするんですけど……?
哲雄 そう、小さい頃から「かわいい」と言われたことがないもんで……って、ほっとけ。「かわいい」を価値基準にしてしまうと、そういう現象にもつながりますよ――ということを申し上げたかっただけです。それにしても、どうなっちゃったんでしょうね、かつての、あのキャッチフレーズは?
AKI あのキャッチフレーズ……って?
哲雄 あら、ご存じない? コマーシャルでしきりに流された、あれですよ。
ワンパクでもいい、
たくましく育ってほしい。
AKI あ、それ、聞いたことがあります。
哲雄 なわけないでしょ。これ、1970年代に「丸大ハム」のコマーシャルで使われたコピーなんだけど、このCMが謳いあげてるのは、「父と息子」の世界なんだよね。山に登った父と息子が厚切りにしたハムを焚き火であぶってかぶりつく――っていう、野性味に溢れたCMでした。ちょうど、漫画では、星飛馬が、父親の星一哲に「大リーグ養成ギブス」を装着させられて、徹底的にしごかれるという『巨人の星』がヒットしていた時代。
AKI ヘーッ。『巨人の星』ぐらいは、私だって知ってますよ。リアル・タイムじゃありませんけど……。
哲雄 別に、その時代がよかった、とか言いたいわけではありませんよ。ただね、その頃までは、「父権」というものが、まだ、社会的にも意味を持ってました。そして、「かわいい」なんて言葉は、価値観としては、ほとんど意味を持っていませんでした。しかし、その後、「父権」は急速に影を潜めていきます。
AKI そう言えば、ドラマでも、CMでも、「父親」ってあまり登場しませんよね。
哲雄 いまじゃ、「父親」は「犬扱い」です。
AKI あ、そうか……。白戸家のあのCMですね。そうか、「父親」が「犬」になったのには、そういう意味があったのかぁ……。
哲雄 わかりませんよ、ほんとのネライがどこにあったのかは。でもね、少なくとも、現代の「父権」は、「犬並み」になったということを、あのCMが象徴している。そういう見方はできると思うんです。
AKI ナルホドねェ。てことは……? 「父権」に代わって、いまは「母権」の時代?
哲雄 私は、そう見てます。そして「かわいい」を主要な価値に位置づけたのは、ほかならぬ「母権」であろうと思っています。
AKI それ、いいことなの? それとも、哲ジイは、よろしくないことだと……?
哲雄 その話、ちょっと長くなるので、また次回に。ところで、キミも私を犬にしたいと思ってるのかな?
AKI いや、虫でいいです。
哲雄 なんじゃ、それ……。

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