住むなら、人口5万人以下の町がいい
不純愛トーク 第204夜
世界を単一の価値のもとに統合してしまおうとする「グローバリズム」と、その土地に根ざした生き方や価値観を尊重しようとする「スローライフ」や「多文化主義」の立場。両者は相容れない考え方として、いまも世界の各地で対立を続けています。今回は、その8回目。人間と人間のつながりを生み出す「共同体」は、なぜ破壊されたのか? それを再構築する方法はないのか? について語り合ってみます――。
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AKI 前回のトークでは、「多文化主義」という言葉が登場しました。世界には、いろんな文化があり、それぞれの価値観がある。それを尊重しようというのが、「多文化主義」の立場なんですよね。これ、「スロー・ライフ」の考え方と、どこか共通するところがあるんじゃないですか?
哲雄 オーッ、それをわかってくださると、とてもうれしいです。世界には、大きく分けて、いま、2つの潮流があります。ひとつは、ウオール街やホワイトハウスで生まれた価値観で全世界を統一してしまおうという「グローバリズム」の流れ。日本のおバカな政治家などは、しきりに「グローバルな」を口にして、そのお先棒を担ごうとしています。
AKI もうひとつは?
哲雄 世界の各地に伝統や共同体に根ざして存在する文化や価値体系を尊重して、人間にとって真の意味で「豊か」と言える生活のスタイルを守ろうとする流れ。「スロー・ライフ」も「多文化主義」も、こちらの流れに属する考え方と言っていいと思います。
AKI ねェ、哲ジイ。いま、「共同体」とおっしゃいましたが……。
哲雄 いいところに目をつけてくれました。実はね、きょうは、その話をしたいと思ったのです。「共同体」と言うと、AKIクンは、まず、何を思い浮かべます?
AKI 農協……とかですか? あ、でも、あれは「協同組合」か……? 家族とかはどうなんですか?
哲雄 ウン。家族は、確かにある意味で共同体と言えるかもしれません。「仮面家族」でなければね。でもね、AKIクン。キミがいま、すぐに答えを思いつかなかったように、近代以降の社会では、この「共同体」は、実は、姿を消しつつあるんですよ。もっと言うなら、「近代」とは、共同体を破壊することによって成立してきた――と言えなくもない。
AKI エーッ!! 破壊しちゃったんだ?
哲雄 ひとつは、「都市化」ということです。産業革命以降、産業資本は、土地や血縁から切り離された単なる「労働力」としての人間を必要としました。そうやって「ピース」にしちまった労働力を、都市へ、都市へ――と集めることで、農村地帯などに成立していた共同体を破壊してしまったわけです。
AKI その都市では、共同体は成立しないんですか?
哲雄 意識的に作ろうとしない限り、成立しませんね。なぜなら、「都市」というものは、「機能性」のために作られた社会ですから。あのね、人間が築く社会は、「ゲマインシャフト」と「ゲゼルシャフト」という2種類に分類することができる。これ、社会学という学問の中では、ごく基本的な概念なので、ぜひ、覚えておいてほしいんです。
AKI 「ゲマインシャフト」と「ゲゼルシャフト」。なんか、むずかしそう……。
哲雄 どちらも、ドイツの社会学者・テンニースという人が言い出した概念なんだけど、「ゲマインシャフト」というのは、家族とか古くからの村落共同体とかのように、人と人とが、喜びとか悲しみとかを全人格的に共有できる社会のことで、ふつうは、単に「共同体」と訳されたりします。
AKI 「ゲゼルシャフト」は?
哲雄 こちらは「利益社会」とか「機能性社会」と訳されるんだけど、人間同士が、利益やある共通目的のために機能的に結びついた社会のことを言います。その代表が会社。そういう会社などが利益を追求できる場所として作られた大都市も、その大都市を維持していくために整備された官庁組織や教育機関なども、すべて「ゲゼルシャフト」と言っていいと思います。
AKI 村は「ゲマインシャフト」だけど、都市は「ゲゼルシャフト」――という考え方でいいんですね?
哲雄 一概にそうは言えません。同じ村でも、開拓のために入植者を募って人工的に作られた村は、どちらかと言うと「ゲゼルシャフト」に近いだろうし、同じ都市でも、古くからそこで営みを続けている人たちが、自然に作り上げてきた都市なら、「ゲマインシャフト」に近いと言えるだろうし、都市の中で暮らす人たちの何人かが、「この街を花いっぱいにしようよ」と集まって作った集まりなんかも、「ゲマインシャフト」だろうね。
AKI 都市の中にも「ゲマインシャフト」がある――ということですか? じゃ、どうなんでしょう? 同じ会社でも、「ゲマインシャフト」みたいな会社もあったりするんじゃないですか?
哲雄 確かに、あり得ます。同じ趣味やワザを持った人たちが集まって、利益のためにじゃなくて、自分たちの生きがいとして、共同で会社を運営しようよ――なんて感じで作った会社なら、会社ではあっても「ゲマインシャフト」と言えるかもしれませんね。それに、自発的に作られた「NPO法人」なんかも、どっちかというと、「ゲマインシャフト」に近いでしょうね。その逆もあるんですよ。
AKI エッ、逆って……?
哲雄 「ゲマインシャフト」の代表と言ってもいい家族でも、たとえば、政略結婚であったとか、亭主の稼ぎだけが目的の結婚で、ほんとは亭主なんて早いとこくたばってくれればいい――なんて思ってる家族だと、とても「ゲマインシャフト」とは言えないよね。
AKI 私の友だちでもいるんですよ、そういう女が。この男なら、稼ぎもいいだろうし、子どもをきちんと私立の幼稚園に入れることだってできるだろう――って、計算に計算を重ねて結婚したのに、その会社がつぶれちゃった。私、何のために結婚しのよォ、って泣き喚いてるバカ女が……。
哲雄 まさか、キミも同類じゃないだろうね?
AKI 失礼な! 私がそんな女に見えます?
哲雄 そりゃ、失敬。それでね、この「ゲマインシャフト」と「ゲゼルシャフト」に関してなんだけど、「スロー・ライフ」運動の中では、こんな主張をしている人たちもいる。
AKI どんな?
哲雄 自分たちは、人口5万人以下の町にしか住まない――っていう主張。
AKI あ、それ、何となくわかります。私ね、今度の大震災を見ていて感じたことがあるんです。被害に遭った人たち同士が助け合っている姿が、あっちの町でも、こっちの町でも……っていうふうに見られたでしょ? もし、東京だったら、こうはいかなかったよなぁ……って思うんですよね。
哲雄 ハイ、それは私も感じました。そういう光景が見られたのは、たいていは、人口5万人程度の小さな市町村でしたよね。それくらいの規模の都市だと、おそらく、おたがいがある程度、隣人たちのことを把握しているんだと思う。ああ、駅前の「○○商店」のあじさんが……とか、「××医院」の院長先生が……とか、その町の成員全員が共有できてる情報も多いだろうと思う。人間が人間らしく暮らすためには、そんなふうに自分の隣人たちの情報を共有できてることって、ものすごく大事な気がするんだよね。
AKI その境界線が、人口5万人?
哲雄 ま、それくらいじゃないか……ってことだね。ところが、日本では、東京という化け物みたいな大都市への一極集中が、これでもかってほど進んでしまった。利益を得ようとする大企業にとっては、そのほうが効率がいいし、集中によって絶えず必要とされる都市機能の整備だけでも、莫大な利権が発生する。しかし、それでいいのか? しかも、国は、なおも人と金を東京に集めるために、新幹線網も、高速道路網も、すべて、東京へ、東京へ――と向かうように設計しようとしている。
AKI ま、暮らすほうにしてみれば、そのほうが便利……ってところも、あるんだけどね。
哲雄 でも、その便利さのために、人間として大事な「人と人との自然なつながり」を失くしてしまっていいのか? 私は、どうも違うような気がするんだよね。
AKI それは、私も同感です。それでね、私、震災後の復興のあり方を見ていて、もうひとつ感じたことがあるんですけど……。
哲雄 ホウ。お聞きしましょうか。
AKI あのね、仮設住宅のことなんだけど、あれって、哲ジイはどう思います? 私ね、なんだか、あの住宅のあり方って、せっかくでき上がりつつあった人と人との助け合いの仕組みを、なんだか壊してしまってるような気がするんです。
哲雄 それは、私も感じてました。あの仮設住宅のコンセプトって、「核家族」を基本にした考え方だよね。家族単位でプライベートを確保することに主眼が置かれてると思うんだけど、それって、人間を救うことになってるんだろうか――ってね。キミが言うとおり、せっかくでき上がりつつあった「地縁の人の輪」を、再びバラバラに分解してしまっているような気がする。
AKI 家族単位じゃなくてもいいんじゃないか、ってことですか?
哲雄 極端な話、寝室だけプイバシーが確保されていれば、あとはむしろ、共有スペースにしちゃったほうが、孤立感や疎外感を味わわなくてすむんじゃないか、という気もします。これはね、実は、最近、増えている「シェア・ハウス」の考え方にも共通すると思うんだけど……。
AKI 「シェア・ハウス」? ああ、あれですか? ひとつの家を何人かで棲み分けるっていう……。
哲雄 昔、「下宿」とか「間貸し」と呼ばれたスタイルです。ああ、そうそう、ドラマの『京都迷宮案内』で、杉浦記者が住んでいる部屋も、あれは賄い付きだから、下宿ってことになるんだけど、「シェア・ハウス」の一種ですね。
AKI まさか、哲ジイ、これから「シェア・ハウス」に住もうとか考えてるんですか?
哲雄 というか、これ、ひとつのライフ・スタイルとして、もっと普及させてもいいような気がしてるんです。シェアし合ってる同士は、言ってみれば、ひとつ屋根の下で暮らす家族みたいになりますよね。「血縁」ではなく、「地縁」によって結びつく家族。私は、これからの高齢化社会で、高齢者の孤立を防ぐという意味でも、一考に価する考え方だと思うんだけど、長くなるので、この話はまた、次回に。
AKI みなさん、哀れな哲ジイのために、どなたかひと部屋、シェアしていただけないでしょうか?
哲雄 できれば、大家さんは、美貌の未亡人がいいですッ。
AKI コラッ!

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