女性のヴェールを脱がすことが「進歩」と言えるのか?
不純愛トーク 第203夜
世界中で貧富の差を拡大し、人々を不幸に陥れているのは「グローバリズム」であり、それに対抗する考え方のひとつとして「スローライフ」という考え方がある。ここまで6回にわたって、この問題を取り上げてきましたが、今回は、やはり「反グローバリズム」の立場のひとつである「多文化主義」の考え方についてご紹介します。先住民を皆殺しにする文化と、尊重する文化、みなさんが選ぶとしたら、どちらでしょう?
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AKI 前回は、「反捕鯨」は、「文化的グローバリズム」である、とおっしゃいましたよね。
哲雄 ハイ。申し上げました。人種的偏見に満ち満ちた「グローバリズム」による、マイノリティの文化的虐殺に等しい、と思っています。
AKI その「文化的グローバリズム」を推し進めようとしているのは、やはり、かの国の人々……?
哲雄 いや、人々ではありません。かの国には、いろんな人種、文化が入り混じっておりますから。人々……というより、かの国を牛耳る人たち――と申し上げたほうがいいかと思います。
AKI それは、どんな人たちなんですか?
哲雄 ひと言で言うと、「WASP」です。
AKI 「WASP」? 何ですか、それ?
哲雄 「ホワイト(W)」「アングロ・サクソン(AS)」そして「プロテスタント(P)」の略です。ご承知のとおり、アメリカという国は、元々は、イギリスの清教徒たちが新大陸に移民することによって、建国の基礎が打ち立てられました。その精神的基盤は、きわめて原理的色彩の強いプロテスタント思想です。この清教徒たちは、人種的には、アングロ・サクソンですよね。
AKI だから、WASP。いまでも、アメリカ社会を牛耳っているのは、このWASPなんですか?
哲雄 そうです。そして、彼らが精神的基盤としているプロテスタント原理主義は、きわめて凶暴な思想です。南北アメリカ大陸には、さまざまな人種が移住したんだけど、主にカトリック教徒が入植した中南米では、先住民との混血が進んで「ラテン系アメリカ人」という新しい人種が生み出されましたよね。でも、北米ではそうはならなかった。
AKI そうですよね。私も、それは不思議だなぁ……って思ってたんです。もしかして、殺しちゃった?
哲雄 キミは西部劇って見たことあります? ジョン・ウエインとかが活躍していた古い時代の西部劇ですよ。
AKI ハイ。なにげに……。そう言えば、西部劇って、気持ちいいくらい、撃ち殺しまくってますよね、インディアンを。
哲雄 そうです。ほとんど、皆殺しに近い感じ。あれを見てると、騎兵隊のラッパは正義の響きみたいに聞こえるでしょ? つまり、WASPが信奉するプロテスタント原理主義は、異教徒を「悪魔」扱いするんです。先住民は、殺してもかまわない「悪魔」なわけですね。
AKI でもね、哲ジイ、アメリカの独立を支えた思想は、自由と平等を訴えてるんじゃありませんでしたっけ?
哲雄 いいところに気がつきましたね。そうなんです。アメリカは、片方で、法の下での「自由」と「平等」を訴えながら、その一方で、先住民を片っ端から撃ち殺し、悪名高い奴隷制度を作り上げた。とても、同じ人間がやることとは思えない。
AKI そ、そうですよね。なぜなんだろう?
哲雄 それこそが、アメリカという国の矛盾を物語っています。実はね、AKIクン、アメリカという国は、ずっと、2つの相異なる思想のダブル・バインディング(二重縛り)に葛藤し続けているんだよね。ひとつは、WASP特有のプロテスタント原理主義。もうひとつは、さっき、AKIクンが言った「自由」や「平等」を重んじるリベラリズム。リベラリズムのほうは、主に、フランス生まれの啓蒙思想に影響された考え方で、独立運動を主導したのは、どっちかと言うと、こっちのリベラリズムのほうだったんだ。この矛盾が、クジラ問題にも見事に現れています。
AKI ど、どういうことですか?
哲雄 アメリカにイヌイットと呼ばれる少数民族がいるのは知ってるよね。
AKI エスキモーとか言ってた人たちですよね?
哲雄 ハイ。われわれ日本人の祖先である縄文人も、北極圏のイヌイットも、南北両アメリカ大陸の先住民であるインディオたちも、元はと言えば、シベリア方面に住んでいた狩猟・採集民ではないかと言われているのですが、その生活・文化には、驚くほど共通するものが見られます。クジラやイルカを狩猟して食べる、という文化もそのひとつ。つまりね、アメリカにも、クジラを食べる文化が存在するわけです。しかし、アメリカは、国家としては「反捕鯨」を主張しています。
AKI じゃ、イヌイットの捕鯨も禁止になっちやった?
哲雄 ウンニャ。認めさせちゃった。「IWC(国際捕鯨委員会)」に「先住民の伝統的捕鯨に関しては、例外として認める」と言わせちゃったんだよね、圧力をかけて。
AKI あら、アメリカのご都合で?
哲雄 ね、2つのアメリカがいるでしょう? いまでも、国内には、「そんな野蛮なことは止めさせろ」という声がある一方で、「先住民の文化は尊重すべき」という主張があって、クジラ問題に関しても、その2つの声を統一できてない。「野蛮だから止めさせろ」と言ってるほうは、「グローバリズム」で、「先住民の文化を尊重せよ」と言ってるほうが、「リベラリズム」で「多文化主義」。
AKI そうか。「多文化主義」は、「先住民の文化を尊重せよ」と主張するんだ?
哲雄 さまざまな民族・文化がモザイクみたいに寄せ集められたアメリカという社会では、「多様な文化」を認め、尊重する「多文化主義」という立場も、一定の社会的勢力として大きな発言権を持ってるんだよね。
AKI でも、「多様な文化を認めよ」と主張したら、「グローバリズム」とは真っ向からぶつかってしまいまいすよね?
哲雄 ハイ、ぶつかります。アメリカ社会は、常に、そのぶつかり合いに揺れ動いている社会だと言っていいと思います。
AKI それ、クジラだけじゃないでしょう? たとえば、結婚とか……。
哲雄 結婚に関しても、たとえば、キリスト教の一派として異端扱いされているモルモン教では、一夫多妻を容認したりしていました(現在は禁止)。とにかく、世界の価値は、一種類だけではない――というのが、多文化主義の主張の根幹だと言っていいと思います。それがあったからこそ、映画や音楽であれだけ黒人が活躍できるのだし、いまだに電気も自動車も使わないという「アーミッシュ」のような人たちが、そのライフ・スタイルを維持できるのだろうと思いますよ。
AKI 哲ジイも、多文化主義の立場なんですか?
哲雄 ハイ。私は、メチャクチャ多文化主義ですよ。何より嫌いなのは、「私たちの文化こそ正しいのだから、世界は、それに合わせるべきだ」と主張する考え方です。最近、テレビを見ていて感じることがあるんだけどね……。
AKI ハイ、何でしょう?
哲雄 たとえば、アフガン。タリバンを放逐して、女性もヴェールを脱いで活躍できるようになりました――なんていう報道を、しばしば目にするんだけど、「女性がヴェールを脱いだ」は、そんなに価値あることなんだろうか? もしかしてそれは、アフガンもやっと「欧米化」されました――と言ってるにすぎないんじゃないか?
AKI ヴェールを纏ってるほうが、神秘的だったし、美しかったのに……という気も、しなくはありませんよね。
哲雄 モスクワにもマックが出店した――は、そんなにいいニュースなんだろうか?
AKI あんまり、いいニュースとは思えませんでした。
哲雄 アフリカでは、子どもたちが樹の下で勉強しています。教室も机もなくてかわいそう――なんて言ってるけど、ほんとにそう?
AKI 青空の下で勉強できるなんて、うらやましい――と思うこともありますけどね。
哲雄 もし、アフガンの女性たちが、ほんとにヴェールなんて脱ぎたいと思っていた、モスクワっ子が心からマックの出店を待ち望んでいた、アフリカの子どもたちが教室で机の前に座らされる授業を熱望していた――というのなら、問題ないのです。しかし、そうではないのに、外野にいる私たちが、「これでやっとキミたちも私たちと同じレベルに追いついたね」という目で見ているんだとしたら、それは、傲慢もいいとこ。自分たちが支持している価値のほうが上、と言ってることと同じになるからね。
AKI 世界はひとつじゃないゾ――と言いたいわけですね、哲ジイは?
哲雄 ひとつにしてはいけない! と思っています。人生~、いろいろ。女も~、いろいろ~。
AKI そういう問題じゃないでしょッ!

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