「急ぐ」ために失う「いま」こそ貴重
不純愛トーク 第199夜
「グローバリズム」が、実は、世界の人々を不幸にしている。前回まで、そんな話をしてきました。その「グローバリズム」とは正反対の立場をとるのが、「スロー・ライフ」という考え方。今回から数回にわたって、「スロー・ライフ」とは何か? という話をお届けします――。
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AKI 「グローバリズム」は、私たちに「早い」「安い」「便利」を押し付ける考え方だとおっしゃいましたよね。それに真っ向から異議を唱えているのが、「スロー・ライフ」という考え方だと――?
哲雄 ハイ、そのとおり。でもね、「スロー・ライフ」というのは、統一され、体系化された思想というわけじゃない。いろんな「スロー」が追求された結果、総体として「スロー・ライフ」という考え方が定着した――と申し上げたほうがいいだろうと思います。
AKI いろんな「スロー」ですか? たとえば……?
哲雄 スロー・フード、スロー・ビジネス、スロー・サイエンス……それに、キミが好きなスロー・セックスなんていうのもある。
AKI た、確かに、セックスはスローなほうがいいか……と。哲ジイには、ムリでしょうけどね。
哲雄 あのね、そういう「早い」「遅い」の問題じゃないのッ! ここで言う「スロー」はね、ゆっくり、ムリせずに、あるがままの世界を愛しましょう――という意味なのッ! キミは、「時は金なり」という言葉をご存じですか?
AKI 英語で言うと、「タイム・イズ・マネー」でございますね。いくらバカな私でも、それくらいは知ってますよ。
哲雄 近代になって、人間は、「急げ、急げ!」と急かされるようにして生きてきました。何のために? AKIクンは、何のためだと思います?
AKI エーッ……と、タイム・イズ・マネーだから、もしかして「お金」?
哲雄 で? たとえば、キミが食事をマックですませ、郷里に里帰りをするのに飛行機を使い、掃除をお掃除ロボットにやらせて、時間を節約した結果、貯まりましたか、「お金」が?
AKI い、いや、お金は出て行く一方で……。
哲雄 そのお金はどこへ行っちやったんでしょ?
AKI そりゃ、ま……マックとか、飛行機会社とか、家電会社とかに行っちゃったんでしょうかねェ。
哲雄 要するに、グローバル企業の懐に入った。つまり、タイム・イズ・マネーの「マネー」は、グローバル企業を潤す「マネー」だったというわけだ。すると、どういうことになる? キミが節約した「時間」は、グローバル企業を太らせる「マネー」に化けて、そのフトコロに吸収された――ってことにならないかい?
AKI ナ、ナルホド……。でもね、そのぶん、私の手元には「時間」が残ることになりませんか?
哲雄 その時間は、何のための「時間」ですか?
AKI もっと有意義なことに使う時間……ですよ。
哲雄 だから、それは何?
AKI 何か、勉強したり……とか。
哲雄 ホントに勉強?
AKI ま、ゲームしたりとか、ショッピングに行ったりとか、友だちと飲み会したり……とかもありますけど。
哲雄 ゲームは、オンラインで?
AKI ええ、まぁ……。
哲雄 すると、キミが節約した時間は、ケータイ電話のキャリアや、プロバイダーや、ゲーム配信会社に吸収されちゃうわけだ。これも、グローバル企業。ショッピングは、どこへ?
AKI 主にアウトレット・モールとか、大型家電店とか……ですけど。
哲雄 これも、グローバル企業。じゃ、飲み会は?
AKI ま、たいていは、「和民」とか「牛角」とか「土間土間」とか……。
哲雄 要するに、チェーン展開している居酒屋や焼肉店だったりするわけですね。これも、食の世界では、グローバルな企業と言っていい。やっぱり、キミが節約した「時間」は、グローバル企業に吸収されている。
AKI でも、それだけじゃないでしょ? ちゃんと勉強だってしてるし……。
哲雄 その勉強は、何のため?
AKI 自分の将来のため、ですよ。ボヤボヤしてたら、あっという間におばあちゃんになっちゃうから、いまのうちに勉強して、いろんな資格とかも取っておきたいし……。
哲雄 いろんな資格? そんなにいろいろ取ろうと思ってるの?
AKI ウン。取れるうちにいろいろ……と。いつ、どんな資格が役に立つか、わからないでしょ?
哲雄 フーン。エラいんだね……と、言いたいところだけど……。
AKI な、何か、問題でも?
哲雄 い、いや。それが、ほんとに自分の血となり、肉となり、キミの人生を豊かにしてくれる勉強なのであれば、何も問題はありません。でも、それが周りから急かされてやる勉強だったら、あまり意味がないかも……ってね。
AKI でも、私の周りにも、「いまのうちに何かやらなくちゃ」ってあせってる人、けっこういますよ。
哲雄 そうだね。ボクたちは、生まれたときから、ずっとそうやってお尻を叩かれながら生きてきましたよね。
「いまは、そんなことやってる場合じゃないでしょ」
って。私の愛読書のひとつに、辻信一さんという文化人類学者が書いた『スロー・イズ・ビューティフル』という本があるんだけど、その辻さんが書いてるんだよね。「いまはそれどころじゃない」と、現代人は子どもの頃から言われ続けて育てられるけど、じゃ、「それどころ」な「いま」は、いつになったら、やって来るのか? 「それどころじゃない」の「それ」に代わる何かって、いったい何なのか?
AKI そ、それは、おとなになったらわかるんじゃないですか?
哲雄 でも、キミは、おとなになったいまでも、「それどころじゃない」いまを生きてるように見えるよ。何かのために急がされる「いま」を生きてるように見えるんだけど、どうだろう?
AKI ウッ……そう言われれば、そうかもしれない。でも、「花の命」は短いって言うしなぁ……。
哲雄 じゃ、その短い「花の命」をじっくり、ゆっくり、味わえばいいじゃない。でも、キミがやってることは、その逆のような気がする。「短い花の命」を「急げ、急げ!」と生き急いで、貴重な「いま」を失っているような気がする。
「時間」はさ、貯蓄なんてできないんだよ。
AKI ポロッ……。
哲雄 ど、どうしました?
AKI 目からウロコが落ちました。
哲雄 オーッ、それはよかった。
AKI 時間は「貯蓄」できない――ですか? それ、大事なことですよね。
哲雄 ハイ。だから、「早く」ではなくて「ゆっくり」。これが「スロー・ライフ」の考え方の基本なんです。そういう考え方に立って見ると、「早く、早く」と急かす「グローバリズム」は、排除すべき考え方のように見えます。
AKI 特に問題なのが、フードなんですね?
哲雄 そもそも、「スロー・ライフ」という考え方が広がったのも、イタリアの小さな村で始まった「スロー・フード」運動がその始まりでした。これについては、じっくりお話したいのですが、それを話し出すと長くなるので……。
AKI ハイ、それは次回に――ですね? 私の食生活も、徹底的に叩かれるわけですね?
哲雄 叩きはしませんけど、ちょっと批判はするかもしれません。ちょうど、次回は、AKIクンとこのトークを始めて200回目の記念すべきトークですからね。どうぞ、お楽しみに。

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