第1夜 「結婚」は「財産問題」である
AKI 突然ですけど、一度も結婚してないんでしょ? 何か理由でもあったわけ?
哲雄 別に……と言いたいとこだけど、ま、あんまり好きじゃなかったんですね。
AKI 相手が?
哲雄 じゃなくて、結婚が。正確に言うと、結婚という制度が……。
AKI 結婚って、制度スか?
哲雄 制度だよ、民法という法律が定めている制度。なぜ法律で定めるかというと……。
AKI わかった。重婚を防ぐため。
哲雄 確かに、日本の法律では禁止されてるけど、世界には、複数の奥さんを持っていいという国や 部族もあるし、複数の夫を持つことが許されているところもあるからねェ。ほんとは、そういうところに行きたかったけど……。
AKI そうだったんだぁ……。
哲雄 ジョーダンだよ、ジョーダン。でね、なんで法律で定めるかというと、もっとも古くは、血縁問題。近親間の婚姻を禁止するためで、これはかなり未開の時代から、きちんと制度が作られてた。もうひとつは、財産問題。
AKI 慰謝料とか財産分与とか? あ、そうそう、相続の問題もあるしね。
哲雄 ウーン、そういうことが問題になるようになったのは、実は、かなり近代になってからのことでね。それ以前は、妻というもの自体が、男の私有財産として扱われていた。だから、その財産の所有権を保護するという目的で、さまざまな取り決めが作られたんだ。その代表が、つい最近まで存在した姦通罪。
AKI ヘーッ、姦通は罪だったんだぁ?
哲雄 そう。男が既婚の女と情を交わすと、その女の夫の所有権を侵害することになるから、姦通罪。でも、男が自分の召使に手をつけても、街で未婚の女をハントしてことに及んでも、姦通罪には問われない。だれの所有権も侵してないからね。
AKI そんな……ひどい話じゃないですか。じゃ、女が同じことをしても、姦通罪にはならないわけ?哲雄 既婚だと罪になるよ。夫の所有権を侵害したことになるわけだからね。でも、未婚であれば、女の側が罪に問われることはない。もし、それも罪に問うなんてことになったら、AKIちゃんなんて、終身刑だもんね……。
AKI あれは、姦通なんかじゃありません。ボランティアですッ!
哲雄 ボ、ボランティア? 仕事じゃなくて?
AKI 仕事では、そこまでしませんッ! あれは、仕事を越えてこの人を癒してあげたいっていう、私の好意っていうか……愛っていうか……。
哲雄 あずかりたいもんだね、そういう好意に、私も。
AKI そ、そんな目で……見つめないでくださいよ、ンもう……。
哲雄 ま、とにかくです。現代では、「妻が男の所有物」という考え方は排除されたけど、結婚という制度が、主として財産マターであるということに変わりはないわけで、純粋な私としては、そこに不純さを感じちゃったりもするわけですよ。
AKI だから、反対なの?
哲雄 別に、反対はしてないけど……。
AKI じゃ、いいじゃない。好きな人と一緒にいたい、ただそれだけで結婚するっていうのもありでしょう。
哲雄 でも、それだけだったら、同棲でもいいわけじゃありませんか。私としては、愛が純粋であればあるほど、それを、「結婚」などという計算高いシステムの中に取り込むことに抵抗を感じるわけで……。
AKI だから、結婚しなかった。
哲雄 ていうか、相手がそれを望まなかった……。
AKI エ、そういう人が、いたんだ……。それ、前世紀の話……ですか?
哲雄 ナヌ?
AKI つまり、1900年代の話ですか、ってこと。
哲雄 コ、コメントを差し控えさせていただきます。
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