自伝的エッセイ「創愛記」〈5〉 最初で最後の折檻

老犬自伝的エッセイ 「創愛記」  Vol.5  


ボクは一度だけ、母親から折檻を
受けたことがある。赤痢が流行る
真夏の昼、ボクは禁止されていた
アイスキャンディーに手を出した。


 その頃、街では赤痢が流行っていた。
 白い服を着た保健所の職員が、消毒薬の散布機をリヤカーに積んで、町内の下水の側溝やゴミ箱や塀や玄関・勝手口などに、白い粉を撒いていく姿が、あっちの町でもこっちの町でも見られる、そんな時代だった。
 おとなたちは、その赤痢の蔓延を恐れていた。外から帰ったら手を洗うこと、生ものは極力、口にしないことなどが、学校でも、地域の町内会でも、各家庭でも、言い交されていた。
 しかし、ボクには、どうしても食べてみたいものがあった。
 それがアイスキャンディーだった。

 家の隣に何でも作る町工場があった。
 本業は、クルマの修理工場だったが、キャラメルも作っていて、その甘い香りが家の中にまで漂ってきた。その工場では、夏になると、アイスキャンディーも作っていた。
 そのアイスを買ってほしい――と、何度か母親にねだったが、「おなか壊すやろ」「赤痢になるかもしれんけん」と、かたくなに拒まれた。
 そうなると、ますます口にしたくなる。
 ある日、ボクは、大量のアイスキャンディーが道にぶちまけれられているのを見た。
 それは、工場が捨てた作りそこねたキャンディの残骸だった。もう売り物としては出せないので、道にぶちまけたのだろうが、ボクの目には、それは宝の山のようにも見えた。
 イチゴ、メロン、そしてミルク……さまざまな色に輝く砕けた氷の塊。それは、禁じられた宝の塊のようでもあった。
 ボクは、その「禁じられた宝の山」に手を伸ばした。

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あなたへの「悪意」はこうして拡散する

手にハート  不純愛トーク   第423夜 

ある集団の感情を自分に有利に誘導しようとすると、人は、「自分の手柄」や「他人の悪口」を言い立て、拡散させようとします。今回は、「悪意」の拡散について。あなたへの「悪意」がどう拡散していくのかを考えてみました――。

 Talker 
哲雄 自ら著作を手がけるエッセイスト。当ブログの管理人です。
AKI 出張エステ嬢として働きながら、作家を目指すアラサーの美女。

【今回のキーワード】 フェイク 悪意


AKI ある集団の中でその感情を自分に有利に導こうとする人間は、自分の「手柄話」やひとの「悪口」を拡散させようとする。前回は、そんな話をしたんですよね。そうした「手柄話」や「悪口」は、どうやって拡散されていくのか? 今回は、そのメカニズムを解明していこうということでした。

哲雄 そうでしたね。まず、「悪口」のほうですが、たとえば、AKIクン、キミが同僚のタマちゃんから「飲みに行かない?」と誘われたとします。「奈々さんがおごってくれるって言ってるの」とタマちゃんは言うのですが、実はキミは、その「奈々さん」が、あまり得意ではない。なので、こんなふうに返事してしまいます。

 13 奈々さんと飲むの? あの人、ちょっと苦手なんだよねェ。

このひと言を発した結果、AKIクンは「飲み会」不参加となるのですが、さて、このひと言は、どのように集団に広がっていくでしょうか?

AKI なんか、怖い気がする。

哲雄 そう。怖い話になっていくんですよ。後日、キミは、飲み会に参加したお仲間のひとりから、こんなことを言われてしまいます。

 13 AKIちゃん、奈々さんが嫌いなんだって?

どうしてそんな話になってしまったのか、わかりますか、AKIクン?

AKI もしかして「苦手」とか言ったのがまずかった?

哲雄 そうでしょうね。「苦手」なんていう言葉は、いかようにも解釈のできる「あいまい言語」です。こういう言葉は、人の口から口へ――と伝わるうちに、その意味がどんどん変質していきます。

AKI 伝言ゲームのようにですか?

哲雄 伝言ゲームの場合は、言葉が正確に伝わらないミステークが原因で、意味が変わってしまうのですが、悪口が拡散していく場合には、そこに「悪意」という「人の意思」が介在します。この「悪意」は、キミが発した「苦手」という言語を、いかに「AKIは奈々が嫌い」という「フェイク」に変えてしまうのか?

AKI それ、知りたいです。

哲雄 では、まいりましょうか。

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自伝的「創愛記」〈6〉 死体を嗤うおとなたち

老犬自伝的エッセイ 「創愛記」  Vol.6  


豊肥線で人が轢かれて死んどる。
「見に行こう」と岡田クンが言い出し
ボクたちは事故現場に出かけた。
そこにいたのは――。


 「人が轢かれとォ」
 そう言ってボクに回り道しようと言い出したのは、岡田クンだった。
 岡田クンの家は、豊肥線の線路のすぐ脇にある農家だった。
 ほんとうなら、市電の走る表通りからガード下をくぐって、線路脇の道を歩いて帰るのだが、岡田クンが「見に行こう」と言い出した。
 小学校に上がったばかりの夏休みが終わった頃だった。
 ボクたちは学校の運動場側の裏口から出て、神社の脇を抜け、踏切をわたる裏道を歩いて帰ることにした。
 ボクらは、少し、興奮していた。
 「はらわたとか飛び出とるやろうか」
 「脳みそも飛び散っとるっちゃないか」
 岡田クンはなんだかワクワクしているようだったが、ボクはそんな話を聞いて、少し、見るのが怖くなっていた。

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自伝的創愛記〈7〉 水への恐怖心が生まれた日

老犬自伝的エッセイ 「創愛記」  Vol.7  


忘れることのできない一日がある。
もしかしたらあの日でボクの人生は
終わっていたかもと思う一日。
そのとき、ボクは、8歳だった――。


 その日は、朝から猛烈な雨が降り続いていた。
 傘をたたいた雨水が瀧となって流れ落ちるような、恐ろしいほどの雨足。それが、朝から降り続いて、学校は、午前中の二時限で休校となった。
 昼過ぎには、父親が会社から帰って来た。たぶん、「早めに帰宅するように」という指令が会社から出たか、会社にそういう通達が回されて来たのだろう。
 「きょうは水が出るかもしれんけん、濡れて困るもんとかは、できるだけ高いところに上げとけよ」
 そういうときになると張り切る父親の指示で、ボクは教科書やノートをランドセルと一緒に天袋に上げ、当面、学校に着ていく服などを、木箱に詰めて押し入れに上げた。
 日が暮れると、ボクたちは、畳を押し入れに積み上げ、リンゴ箱を重ねて作った食卓に食器を並べ、余ったリンゴ箱をイス代わりにして、夕食を済ませた。
 いつも食事をする食卓は、父親が押し入れに上げていたからだ。食卓を濡らさないように――という配慮からではない。
 父親が言うには、もし水が出たら、押し入れの上段ぐらいまで水が上がってくる。布団などは、押し入れの上段に並べた食卓の上に上げとったほうがよかろう――というのだった。
 「エッ、そげんとこまで水が上がってくると?」
 その高さを見て、ボクは怖くなった。その高さは、まだ小さなボクの頭をはるかに超えていた。

            

 まだ、TVもない時代だった。
 もちろん、コンピュータもなければ、インターネットなんてものもない。
 気象衛星はおろか、気象レーダーさえ各気象台には配備されてない時代だから、各地方の管区気象台は、各地の観測所から送られてくる気圧や雨量のデータを元に、天気予報や各種の警報を流していた。
 そんな時代に、「きょうは水が出る」と予測して、生徒を下校させた学校の先生たちや荷物を押し入れに避難させた親たちは、天変地異について、何かしらボクたちには想像のできない予知能力のようなものを備えているように見えた。
 リンゴ箱での夕食がすむと、今度は、ありったけのリンゴ箱を畳を剥いだ床板の上に並べ、その上に敷布団代わりに座布団を敷いて、ボクたちは仮眠をとることにした。
 屋根に降り注ぐ雨の音が聞こえていた。横殴りに降りつける雨が雨戸を叩いて、不気味な音を立てていた。
 ボクたちは、無事に朝を迎えられるんだろうか?
 そんな不安から逃げたくて目を閉じると、いつの間にか、眠りに落ちていた。

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最初で最後の「家出」の誘い

老犬自伝的エッセイ 「創愛記」  Vol.8  


幼少期のボクに、一度だけ、
母がつぶやいたことがあった。
母さんと一緒に家を出ていこうか?
ボクはその誘いに首を振った――。



 父と母が仲睦まじくしているという光景を、幼い頃のボクは、ほとんど見た記憶がない。
 父が母に口を開くときには、「××しとけ」とか「〇〇せェよ」と、何かを命令する口調ばかりだったような気がする。
 母は、その命令に、たいていは「ハイ」「ハイ」と従っていたが、「××て言うたじゃないですか?」と涙まじりに抗議することもあった。ときには、怒った母が父に向って茶碗を投げつけることもあった。
 怒った理由が何なのか、子どもであるボクにはさっぱりわからなかったが、そんなとき、母はいつも涙を流していたので、子どもの目には、父が母を虐げている――としか映らなかった。
 
 ボクの家は、
 和気あいあいとして、
 温かい空気に満ち溢れているように見えるよその家とは、
 少し違うようだゾ。


 子ども心にも、そう感じていた。そんな日が続いた初夏のある日のことだった。

            

 「ねェ、テツオ」
 母親が、いつになくしんみりとした声で、呼びかけてきた。
 いつのことだったか、ハッキリとした記憶はない。
 あの大水の前だったか後だったかも、いまとなってはわからない。
 弟は生まれていたはずだが、妹が生まれていたかどうかも定かではない。
 ボクはそのとき、自分が使った寝具を畳んで、押し入れにしまっていた。重い布団を「ヨイショ」と抱えているときに、「ねェ、哲雄」と母の声が覆いかぶさってきたのだった。

 母さんと一緒にこの家ば出て行こうか?

 ボクには、一瞬、その意味がわからなかった。
 意味はわからなかったが、「家を出て行く」が、住み慣れた家からどこか遠くへ行ってしまう――というふうに聞こえたのだろう。
 後で母親が言うには、ボクは即座に、「イヤだ」と首を振ったのだそうだ。
 「そうね、イヤね……」
 母親は、声を落としてつぶやいた。
 そして、二度とその言葉を口にすることはなかった。

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