自分を調整するためのつまみ。私は、常時、何種類かを用意しいるのですが、その中で日常的にもっとも重要なつまみと位置づけているのが、「
テンポつまみ」です。
「テンポ」とは、行動したり、何かの動作を繰り返したり、思考したりする際の「速度」や「間隔」と思っていただければいいかと思います。
私・長住は、この「テンポ」を、おおむね5種類ほど用意して、必要に応じて使い分けています。
ファースト = 「通常」の2倍速以上 ~何かに急かされて、あるいは急ぐべき理由が生じて行動したり判断したりするときの速度。
ミディアム・ファースト = 「通常」の1.3~1.5倍速 ~「急ぐ」という意識を持って、いつもより速度を上げて行動したり、判断したりするときの速度。
ミディアム = 「通常」の速度 ~日常の行動を特に何も意識せずにこなすときに使う速度。
ミディアム・スロー = 「通常」の0.7~0.8倍速 ~「ゆっくり、のんびり過ごそう」と意識して行動するときの速度。
スロー = 「通常」の0.3~0.5倍速以下 ~行動や思考をセーブして、体や脳を休ませようとするときの速度。
ミディアム は、意識せずにこなす日常行動をとるときのテンポだし、
スロー は「休息」しようとするときのテンポ、
ファースト は、急ぐ理由が「外部」に存在する場合にやむを得ず取らされるテンポですから、どれも意識して使い分けるわけではありません。
意識して使い分けているのは、
ミディアム・ファースト ミディアム・スロー 、この2つです。
いつもより速く行動する効果=ミディアム・ファースト たとえば、街を歩くとき――。
何も考えずに歩くときには、ぶらりぶらりと歩く人も多いだろうと思うのですが、どこか目的地が定まっている場合には、私の場合は、やや速足に歩きます。
どの程度の速足か――というと、ふつうに目的もなく歩いているときの「
1・3~1・5倍程度」の速度。
きょうも元気だ。気持ちいいなぁ……。 そう自分に言い聞かせながら、軽快に足を運ぶのですが、決して無理はしません。すねが痛くなったり、太ももが痙攣しそうになるような負荷をかけたりもしません。
そういうときには、私はいつも、好きな曲を頭に浮かべてテンポをとっています。少しアップテンポな4ビートなどを口ずさみながら(と言っても実際には声には出さず)、軽快に歩を進めるわけです。
足を軽快に動かすと、私の場合、それだけで体が気持ちよくなります。しかし、気持ちよくなるのは、体だけじゃありません。
実は、体よりももっと気持ちよくなるものがあるのです。
それは大脳。
いつもよりちょっと速く、心地いいテンポで歩こうとするとき、私の大脳の中では、いろんなことが同時に起こっています。
[1] テンポをとるための曲を思い出し、その歌詞とメロディーを前頭前野に送って、気分を歌詞に表現された気分に合わせようとします。
[2] 曲のリズムを前頭前野から運動野に送ると、運動野は足をリズムに合わせて動かす指令を筋肉に伝えます。
[3] 足底の筋肉は、踏みしめる地面の感触を神経を通して体性感覚野に伝え、体性感覚野はその情報を前頭前野に送って、「オレは気持ちよく大地を踏みしめているゾ」という感情を生み出し、「よしこの調子で歩け」という情報を運動野に送り返します。
[4] その間、目がとらえた視覚情報は、視床⇒視覚野と送られた後、ひとつは、前頭前野に送られ、「緑がきれいだなぁ」「おっ、新しい店ができたなぁ」などという知的判断を生み、その情報を海馬へ送って記憶回路に一時保管します。
[5] もうひとつは、視覚野から頭頂葉に送られて、空間や位置を判断させ、その情報を前頭前野⇒運動野と送るルート。これによって、歩いている私は、「このまままっすぐ歩け」「人とぶつかるぞ。右に寄れ」などの指令を筋肉に送ります。
いつもよりちょっと速く歩いてみるだけで、大脳の中ではこれらの作業が活発に行われます。その都度、神経細胞同士は、たがいに伸ばし合った突起(出力系の
軸索と入力系の
樹状突起)を通して情報をやり取りします。こうして、神経細胞同士のネットワークが密に形成されていきます。