愛を駆ける急行☆目次

後姿 父と母が愛し合った時代に。感謝を込めて 


     連載/社会派恋愛小説 

  愛を駆ける急行

父と母が出会い、愛し合った時代には、
とてつもない「距離」が実在していた。
亡き母の魂を郷里に里帰りさせるという
父の旅に同行した私は、その旅を通して、
「父と母の時代」知ることになります。

           目次 

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 プロローグ  「距離」を失いゆく者たちへ

 第1章  赤い鉢巻と黒いスカート
       〈1〉 迷惑な道連れ
       〈2〉 冷凍みかんをどうぞ
       〈3〉 肩で眠る天使
       〈4〉 旅人の優位性

 第2章  2つのキャンパス
       〈序〉 石を投げたの? お父さん。
       〈1〉 髪、伸びた……
       〈2〉 壊されていく十九歳
       〈3〉 奇跡のジョイント

 第3章  京都に吹く風
       〈序〉 父が母を尊敬したように
       〈1〉 彼女の背後に立つ男
       〈2〉 愛と火炎瓶
       〈3〉 思想の腕は彼女の胸に沈む
       〈4〉 キスと法華の太鼓

 第4章  流血の季節
       〈序〉 「楽しい」だけで生きていられたら
       〈1〉 ベトナムのために何を祈る?
       〈2〉 いちばん美しい祈り

 第5章  十字架を磨け
       〈序〉 父と母が結ばれた場所は、いま…
       〈1〉 2つのクリスマス、ひとつの心
       〈2〉 キミよ、屋根に上りて十字架を磨け
       〈3〉 屋根裏に忍んで来たひと
       〈4〉 無知な体を重ね合って

 第6章  革命とキス
       〈序〉 二十歳は残酷
       〈1〉 鉄路の忍び逢い
       〈2〉 揺れる東大、燃える日大
       〈3〉 カリスマの誕生
       〈4〉 運河の臭いのする四畳半で
       〈5〉 革命か、キスか?

 第7章  短い夏の、プチ同棲
       〈序〉 砦の内と外
       〈1〉 申し訳ないが、幸せです
       〈2〉 段ボール箱の「貧者の食卓」
       〈3〉 離れがたい肌と肌

 第8章  キミは何色?
       〈序〉 擦り切れたフォークソングのように
       〈1〉 流血の秋
       〈2〉 邪宗との闘い
       〈3〉 危険なお誘い
       〈4〉 恋敵現る…?

 第9章  敗北の街
       〈序〉 母の「熱中」と父の「冷静」
       〈1〉 屋根の上の男ふたり
       〈2〉 答えは「風」に吹かれて…
       〈3〉 デモとセックス
       〈4〉 彼女の赤い決断
       〈5〉 投石と銃撃の街角で

 第10章  風に消えたキミ
       〈序〉 「革命神話」の行き着く先
       〈1〉 傷だらけの女戦士
       〈2〉 黄色いシャツをあなたに
       〈3〉 彼女の「不在」の理由
       〈4〉 キミを尋ねて京都へ

 第11章  季節は移り…
       〈序〉 愛の名ゆえに怒れ!
       〈1〉 ワケを知る男
       〈2〉 血塗られた黄色いシャツ
       〈3〉 失われゆくパトス
       〈4〉 失われたリアルを探して

 終章  さらば霧島。さらば青春
       〈序〉 旅の重さ、想いの尊さ
       〈1〉 ここにいてはいけない
       〈2〉 牧師館にて
       〈3〉 コウノトリの里へ
       〈4〉 愛よ走れ、光の中へ!

 エピローグ  郷里の海に舞う、白い魂

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愛を駆ける急行☆プロローグ~「距離」を失いゆく者たちへ

後姿 父と母が愛し合った時代へ。感謝をこめて

父が母の魂を里帰りさせると言い出した。
その距離、1500キロ。父は、その距離を
列車で行きたい、と言う。
私には、想像できない距離だった――。


 小説/愛を駆ける急行   プロローグ  「距離」を失いゆく者たちへ

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 独身最後の旅になる。
 父は、自慢の一眼レフをていねいにクロスで拭いては、レンズと本体をまるで宝物のようにクロスに包んで、バッグの底にしまい込んでいる。
 そんな重いカメラを持って行かなくても、スマホでいいじゃない――と思うのだけど、父はどうしても、ちゃんとしたカメラで撮るんだと言って聞かない。スマホのレンズでは、「空気感」が出せないんだと言う。
 そのカメラの上から、何枚か、衣類を重ね、その上にそっと置いたのは、母の写真だった。母がまだ40代だった頃の写真。10歳になったばかりの私を後ろから抱き締め、頬ずりしながら、カメラに向かってほほ笑むその一枚が、まるで聖母のようだ――と、父は、見るたびに目の縁を拭った。
 その母が、子宮がんを患い、闘病の末に亡くなって、今年で3年になる。

 その計画は、突然のように、父の口から語られた。
 「昌子の魂を帰郷させてあげたい」と言うのだ。
 母の郷里は、鹿児島だ。
 別に、墓があるわけではない。墓は、父と母で一緒に入ろうと、郊外に樹木墓を購入してあり、母はすでに、アカシアの樹の根元で眠っている。
 女学生時代に、通っていた教会で洗礼を受けてクリスチャンとなって以来、郷里の親族たちとは疎遠になったという母だが、父の前では、いつも、郷里の山河を懐かしそうに語っていたと言う。
 ついにかなわなかった父と母そろっての帰郷を、自分が生きているうちに果たしたい。娘の私にも、母の郷里を見せておきたい――と言うのだった。

 飛行機で行くのだろうと思ったら違った。
 できれば、在来線の特急を乗り継いで行きたい、と言う。
 「もう、ないよ」と私は言った。
 父は、「エッ」と声を挙げたきり、口をポカンと開けている。
 「だからね、お父さん。九州まで行く寝台特急なんて、もう一本もなくなってしまったのよ」
 「そうか……」と声を落とした父が、母の写真に向かってつぶやいた。
 「昌子、もうないんだってさ。ボクたちが出会った急行列車も、直通の特急列車さえも、もう走ってないんだって。何もかも、無くなってしまうんだねェ」
 父の言う「何もかも」の中に、他にどんなものが含まれているのか、私は知らない。
 嫁いで、家を離れていく私も、そのひとつなのかもしれない。歳をとり、母が亡くなってからは、なんだか気力が失せていくように見える父を、ひとり、家に残していくことに、少し胸が痛む。
 しかし、それは、父が自ら望んだことでもあった。

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愛を駆ける急行☆第1章 赤い鉢巻と黒いスカート〈1〉 迷惑な道連れ

後姿 父と母が愛し合った時代へ。感謝をこめて

父が帰郷に使ったのは、「霧島」という急行だった。
車内は、年末の帰省客でごった返していた。
やっと見つけた1人分の座席は、
投げ出した男の足で埋められていた。
その足を叩くと、男は面倒くさそうに体を起こした。


 愛を駆ける急行   第1章 赤い鉢巻と黒いスカート 
〈1〉迷惑な道連れ

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この話は、「急行霧島」として執筆した作品のリメイク版、連載2回目です。最初から読みたい方は⇒こちら からどうぞ。

ここまでのあらすじ 父・秋吉敏が、母・昌子の魂を里帰りさせたいと言う。かつて、自分たちが出会った「距離」を追体験しながら…。私には、想像がつかない「距離」だった――。




 父・秋吉敏は、その年、横浜の大学に進学したばかりで、それは、夏休みに続いて二度目の帰省旅行だった。夏休みの帰省にも、冬休みの帰省にも、敏は「霧島」を使った。
 すでに、新幹線は、新大阪まで開通していたが、新幹線と在来線の乗継だと高くついてしまうので、急行券500円と乗車券だけですむ「霧島」を使っていたのだという。

 そろそろ年末を迎えようとする車内は、ごった返していた。
 四人掛けのボックス席はほとんど乗客で埋まり、網棚には、大きなボストンバッグや紙袋がギュウギュウに押し込まれていた。
 空いている席を探して、車両を後ろから前へ移動していると、なんとか一人分の席が空いているボックスが見つかった。空いてはいるのだが、席は埋められていた。
 向かい合う席に座った男が、分厚い靴下を履いた足をシートに投げ出し、空いている席を占拠していた。
 男は、ベージュ色の作業ズボンに腹巻き、上半身には綿入りのちゃんちゃんこを羽織り、頭にはねじった赤いタオルを巻いて、寝息を立てていた。東京方面での仕事を終えて郷里へ帰るところか、あるいは年末年始の仕事を求めて関西方面へ向かう季節労働者、というふうに見えた。
 どうしようかと思ったが、他に空いている席はない。
 敏は、投げ出された男の足をポンポンと叩いた。
 冬眠にはいったばかりのところをたたき起こされた熊のように、男は、不機嫌そうにまぶたを持ち上げ、敏の全身を足元から頭のてっぺんまで、なめるように見回した。
 「ここ、いいですか?」
 「オッ……」
 面倒くさいなぁ……という顔をして体を起こすと、男は、シートに上げた足を床に下ろした。床には、一面に新聞紙が敷かれ、男が履いていた作業用ブーツは、シートの下に並べて押し込まれていた。
 敏は、車中で読むために持ってきた本を二冊と、小田原を過ぎたら食べようと買い込んでおいた弁当を取り出し、バッグを網棚に上げて、さっきまで男の足が占拠していたシートに腰を下ろした。

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赤い鉢巻と黒いスカート〈2〉 冷凍みかんをどうぞ

後姿 父と母が愛し合った時代へ。感謝をこめて

その人は、京都から鹿児島まで帰省すると言う。
眠りこけて自分の腿に伸びてくる赤鉢巻の足を、
やさしく元に戻してあげながら、「よかったら」と、
冷凍みかんを手に握らせた。男は目を覚まし、
乗り換えの支度を始めた。行先は四国――。


 愛を駆ける急行   第1章 赤い鉢巻と黒いスカート 
〈2〉 冷凍みかんをどうぞ

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この話は、「急行霧島」として執筆した作品のリメイク版、連載3回目です。最初から読みたい方は⇒こちらから、
   前回から読みたい方は、⇒こちらからどうぞ。

ここまでのあらすじ 父・秋吉敏が、母・昌子と出会ったのは、九州への急行「霧島」の車内だった。その年の暮れ、「霧島」は帰省客でごった返していた。やっと、ひとつ席を見つけた敏は、頭に赤鉢巻を巻いた季節労働者風の男と道連れになった。昌子が乗り込んできたのは、京都からだった――。




 「あ、いいですよ。どうぞ、足、伸ばしててください」
 荷物を網棚に上げながら、その人は、目の縁にやさしい笑みを浮かべて、赤鉢巻に声をかけた。
 「すんませんな。そしたら、ちょっと伸ばさせてもらうわ」
 赤鉢巻は、プンプン臭う分厚い靴下の足を伸ばしてくると、足先でボクの腿をグイグイと押した。その足が、「ホラ、もうちょっと窓際に寄ったれや」と言っているように見えた。
 彼女が席に近づいて来たときに、すでに体を目いっぱい窓側に寄せていたのだが、それでも男の合図を無視できなくて、体を縮めるようにして彼女のためのスペースを作った。
 それを見て、またその人の目に笑みが浮かんだ。
 「そんなにムリに詰めなくてもいいですよ。私、けっこう細いですから」
 「ほんまや。ねェちゃん、スマートやわ。ホラ、兄ちゃん、そんなかしこまらんと、ラクにせんかい」
 何が、団結の赤鉢巻だ。
 コロコロ態度を変える男に腹を立てながら少しだけ体を緩めると、隣にその人が腰を下ろしてきた。
 座ったとたんに、その人の体から甘い香りが立ち上って、ボクの怒りを中和した。
 「よかった。席があって。暮れだから、座れないかもと思ってたんです」
 「ねェちゃんも、帰省かい?」
 「はい……」
 「どこや?」
 「鹿児島です」
 「鹿児島? そりゃまた、めちゃくちゃ遠いなぁ。この兄ちゃんは、博多やて」
 「おじさんは?」
 「ワシかい? わしゃ、岡山で乗り換えて高松までや」
 「おじさんも帰省ですか?」
 「ま、そんなもんやな。ババァとガキの顔見に帰ったるんや」
 赤鉢巻が岡山で下車と聞いて、ちょっとホッとし、その人が鹿児島までと聞いて、少しうれしくなった。
 「京都は、学校ですか?」
 「ハイ。女子大の寄宿舎に入ってるんです。あなたは?」
 「学校は横浜ですけど、この列車には、東京から。東京‐博多と京都‐西鹿児島じゃ、時間的にはほとんど同じですね。東京‐博多のほうが、一時間ぐらい長いかもしれないけど……」
 「へェ、そうなんですか? 私、そういう計算、苦手なんで。でも、よかった。じゃ、博多まではご一緒なんですね」
 「よかった」と言われて、敏は少しうれしくなり、そんなふたりのやりとりを忌々しげに見ていた赤鉢巻は、「面白くねェ」とばかり、再び、冬眠に戻った。

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赤い鉢巻と黒いスカート〈3〉 肩で眠る天使

後姿 父と母が愛し合った時代へ。感謝をこめて

岡山を過ぎると、急行の車内は静かになった。
昌子は教会に通い、牧師たちと一緒に
ドヤ街で奉仕活動をしたりしている、と言う。
そんな話をしているうちに、彼女は眠りに落ちた。
その頭がいつの間にか、敏の肩に乗っていた…。


 愛を駆ける急行   第1章 赤い鉢巻と黒いスカート 
〈3〉肩で眠る天使

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この話は、「急行霧島」として執筆した作品のリメイク版、連載4回目です。最初から読みたい方は⇒こちらから、
   前回から読みたい方は、⇒こちらからどうぞ。

ここまでのあらすじ 父・秋吉敏が、母・昌子と出会ったのは、九州への急行「霧島」の車内だった。その年の暮れ、「霧島」は帰省客でごった返していた。やっと、ひとつ席を見つけた敏は、頭に赤鉢巻を巻いた季節労働者風の男と道連れになった。昌子が乗り込んできたのは、京都からだった。京都のミッション系の女子大に通う女子大生で、鹿児島まで帰省すると言う。博多までの道連れができたと喜ぶ敏。赤鉢巻は、四国に渡るために、岡山で列車を降りた――。




 岡山を過ぎると、広島までの間で日付が変わる。
 到着が深夜になることもあって、そこから先の乗り降りは、極端に少なくなる。
 車内は、少し空いてくるが、残っている客はほとんどが、九州まで行く客だ。
 「やっと、静かになりましたね」
 上園昌子は、ほっと息をつき、手にしたみかんの皮をていねいにむいて、そのひと房を口にふくんだ。
 静かになった――は、たぶん、赤鉢巻がいなくなったことを指しているのだろうと思ったが、いなくなったらなったで、それまで男が座っていた席が、少し空虚になったような気がした。
 赤鉢巻が岡山で下車してからは、ボックス席の向かいは、空席のままだった。
 ふたりは並んで腰掛けたまま、足を向かいのシートに伸ばした。
 「いまごろ、みかん食べてるかしら? 船の上で……」
 「ウン。ボロボロ涙流しながら、食べてるかもしれない」
 「あの、私ね……」
 手にしたみかんを見つめていた目を、フッ……と窓の外に向けて、上園昌子はゆっくり言葉を選んだ。
 「ちょっと、胸が痛むんです、ああいう人たちを見ると……」
 水蒸気に曇った窓の外は、カラス色の闇で、その中にポツリポツリと浮かぶ電球のオレンジがかった光や誘蛾灯の青白い光が、空中を揺れながら浮遊する蛍の光のように、ゆっくり後方へ流れていった。
 「『蟻の街のマリア』っていうお芝居、見たことあります?」
 「ドヤ街で暮らす人たちのために生涯を捧げた修道女の話でしょ? その芝居、高校生の頃に、うちの学校に来たよ」
 「あ、それ! 私もそれで観たの。感動したんです、私。それでね、大学に入ってから、ちょっとだけボランティアで行ったことがあるんですよ。大阪にね、西成っていう場所があるんだけど……」
 「知ってる。東京で言うと、山谷ですよね。労務者の街」
 「山谷の話も聞いたことあります。実はね、私、教会に通ってるんです。そこの牧師さんが、そういう街で奉仕活動をされてて、ときどき私たちもお手伝いしてるんですけど」
 「ボクもね、実は……」
 「奉仕活動ですか?」
 「じゃなくて、バイトに行ってます。そういう場所に」
 「エーッ、バイトで……?」
 「いま、人手が足りないんです。ドヤ街に行って立ちんぼしてると、人集めに来るんですよ。仕事あるぞ、やんないか……ってね。横浜の場合は、たいてい船の荷物の積み下ろしだったりするんだけど。ひと晩やると、だいたい三日間くらい食べられる。けっこう、いいバイトになるんでね」
 上園昌子は、ちょっと複雑な顔をした。
 そこで奉仕活動をする女子学生と、そこへ金を稼ぎに行く学生。ふたりの立場の違いをどう埋めようか――と思案している顔に見えた。
 「じゃ……さっきの赤鉢巻さんも、労働者仲間じゃないですか?」
 「飲め、飲めってうるさかったですけどね。でもね、ボクはしょせんバイトだし、あちらはたぶん本業。どうするんだろ……って思うんですよ。もしこのまま、歳をとってしまって、体が言うことをきかなくなったら……って」
 「西成にも、そういう人たちがいるんです。だから、私たちの奉仕活動も、そういう高齢者とか、体を壊して仕事ができない人たちを対象に、食事の炊き出しをしたりしてるんですけどね」
 「ときどき、思うんだなぁ。ボクたちみたいな若いもんが、バイト感覚でそういうところへ仕事を探しに行く。それって、そこでしか働けない人たちの仕事を奪ってることになるんじゃないだろうか……って」
 「ヘェ~、そういうことまで考えるんですか?」
 「考えます。だって、世の中を牛耳ってるほうからすれば、労働コストは低く抑えたいわけだから。同じ賃金を払うなら、若くて元気のある者のほうが、効率いいじゃないですか。ボクは、そういう世の中の仕組みを変えない限り、問題の根本的解決にはならないと思うんだけど、そう思いながら、自分がやってる行動は、その仕組みに手を貸すようなことになってしまってる。その矛盾に、ちょっと悩んじゃったりするんですよね」
 「フーン……」
 深く息をもらしながら、上園昌子は、再び、目を窓の外に向けた。
 「私、そんなことまで考えなかったなぁ」
 ポツリとつぶやいた言葉の続きを期待したのだが、彼女の言葉はそこで途切れた。
 「でも、あなたの……その奉仕活動は……」
 言いながら顔をのぞき込むと、上園昌子のまぶたはすでに閉じられていた。
 その鼻からは、かすかに息を吐く音がもれていた。
 窓の外をゆっくり流れる遠景の灯り。
 コトコト、コトン……と、車輪がレールの継ぎ目を打ち付ける規則的な響き。
 秋吉敏も、いつの間にか、睡魔に襲われていった。

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