青森県の離婚率が高く、石川県が低い「意外な理由」
不純愛トーク 第234夜
日本文化を二分する「イル語圏」と「オル語圏」。恋愛や結婚の形も、「イル」と「オル」では、かなり違う。前回まで、何回かにわたって、そんな話をしてきました。今回は、その違いを「離婚率」から検証してみたいと思います――。
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AKI 前回までの話からすると、哲ジイ、離婚率は、「オル語圏」のほうが高くなりそう……って気がするんですけど、そうはなってないんですか?
哲雄 まず、データから見てみましょうか? よく出てくる県別の離婚率なんだけど、ベスト10を挙げると、こうなってます。

人口1000人あたりの離婚件数――2005年「人口動態統計」より
1位 沖縄県
2位 大阪府
3位 北海道
4位 福岡県
5位 宮崎県
6位 青森県
7位 高知県
8位 東京都
9位 神奈川県
10位 和歌山県
AKI エッ!? 沖縄が1位? ちょっと意外……。
哲雄 でしょ。これ、2005年の厚生労働省「人口動態統計」を元にしたデータなんだけど、ただ、ここで言ってる「離婚率」というのは、《人口1000人あたりの離婚件数》なんだよね。ということは、「婚姻率」が高い地域のほうが「離婚率」も高くなるってことになるよね。実は、沖縄は、「婚姻率」も、1位の東京に次いで、全国第2位なんだよね。結婚する人が多いから、当然、離婚件数も多くなる。つまり、この「離婚率」では、その地域の男女が「離婚しやすい」かどうかを測るものさしにはならない、ということです。
AKI 婚姻件数に対する離婚件数の割合を出さないと意味がないってことですね? そういうデータはないんですか?
哲雄 あります。「相対離婚率」と言うんですが、これは、《離婚件数÷婚姻件数》という数式で割り出していきます。単純に、結婚したカップルの何%が離婚したかを出した数字ですから、この数字は、文字通り「離婚しやすい地域」の指標になると思います。そのベスト10は、こうなってました。

離婚件数÷婚姻件数(単位:%)――2005年「人口動態統計」より
1位 青森県……49.8
2位 高知県……47.7
3位 北海道……45.7
4位 宮崎県……44.4
5位 和歌山県…44.2
6位 徳島県……43.6
7位 佐賀県……42.5
8位 長崎県……42.1
9位 沖縄県……41.7
10位 愛媛県……41.6
AKI エーッ!? 青森、すごーい! 結婚した人のほとんど半分が離婚しちゃってる。
哲雄 不思議でしょ? ベスト10中、青森と北海道以外は、すべて「オル語圏」。北海道は、確かに地理的には「イル語圏」に属していますが、明治以降、その開拓に当たったのは、多くは、九州人だったりしますから、文化的には、「オル語」の影響下にあるとも言えます。とすると、青森だけが、「イル語圏」では突出して離婚率が高い、ということになります。
AKI どうして? どうして?
哲雄 『県民性』という本を書いた祖父江孝男という文化人類学者がいるんだけど、この先生が津軽の農村地方でロールシャッハ・テストによる意識調査を実施したことがあります。それによると、この地域の人たちには、自分の感情を表に表さない抑圧傾向が、他の地域と比べて著しく高い。青森県人、特に津軽人の気質の特徴としてよく語られる「はにかみ」も、その性質をよく表した言葉だと思います。ふだんは、思ったことを口にせず、胸の内にグッと抑え込むのだけど、いったん酒が入ると、延々とクダを巻く。これを土地の言葉で「ゴンボほる」(駄々をこねる。不満を言う=「ゴンボ」は「ゴボウ」の意)と言うのですが、この言葉が定着しているのは、青森・秋田・岩手などの東北地方北部3県なんですね。
AKI そうか。ふだんは言いたいことを口にしないでガマンしているから、不満が爆発したときには、「もう、ガマンできない。別れる」になってしまうのかもしれませんね。
哲雄 青森というのは、複雑な土地でね、同じ青森県なのに、津軽と南部では、言葉も気質もかなり違う。何よりも、同県人なのに、おたがいをものすごく嫌い合っています。
AKI 南部っていうのは……?
哲雄 八戸なんかが含まれる地域だけど、こちらは旧南部藩の所領で、むしろ岩手の北部と地域的には一体感がある。そして、南部のほうがいくぶん開放的だと言われてます。
AKI ね、他の「イル語圏」はどうなんですか? ベスト10には顔を出してきませんけど……。
哲雄 福島が41.2%で11位に顔を出していますが、あとは、軒並み30%台で、離婚率は低いほうに含まれてますね。ちなみに、相対離婚率が低いほうのベスト10もご紹介しておきましょうか?

離婚件数÷婚姻件数(単位:%)――2005年「人口動態統計」より
1位 石川県……31.3
2位 新潟県……31.7
2位 東京都……31.7
4位 愛知県……31.8
5位 福井県……31.9
5位 滋賀県……31.9
7位 富山県……32.2
8位 神奈川県…32.8
9位 岐阜県……33.7
10位 島根県……33.8
AKI あれ……?
哲雄 何か気づきました?
AKI 日本海側が多い……。
哲雄 だよね。北陸の4県がすべて、ベスト10入りしてますよね。そして、東京と神奈川を除けば、こちらもほとんど「オル語圏」。東京とか神奈川っていうのは、全国からいろんな人たちが集まっている地域なので、元々の地域性なんていうのは、ほとんど失われてしまってると考えたほうがいいでしょうね。この2つを除外すると、離婚率が低い地域を特徴づけているのは、次の4つの要素です。このうちのどれか、あるいはいくつかに該当する地域である、というのが、なんだか気になるんですよね。
AKI 一向宗が何か関係あるんですかね。
哲雄 前回も話したと思うけど、一向宗の盛んな地域では、「念仏講」も活発に開かれていました。「念仏講」というのは、信徒たちが集まってお経を唱えたりする集まりなんだけど、おそらく「講組結合」の中でも、もっとも強い結合なんじゃないかと私は思います。なにしろ、信長も手こずるような一揆を起こしちゃったりしたわけだからね。
AKI つまり、団結力も強かったってことですよね。
哲雄 そうです。そして、そんな念仏講の中で、共通の生活信条のようなものが作り上げられていきます。これらの地域では、熱心に念仏を唱えること、勤勉に働くこと、質素倹約に努めてお金を残すこと。これらが、共通の生活信条として広く定着しました。ちょうど、ヨーロッパでプロテスタンティズムが資本主義を生み出したようにね。
AKI そうか。「一向宗が盛ん」ということと「質素・倹約の気風」というのは、どこかでリンクしてるんですね? そして、「オル語圏」だから、そういう「講」の結合も強かった。じゃ、「日本海側」っていうのは?
哲雄 たまたま、一向宗の強かった地域ってこともあると思うんだけど、私は、もうひとつの可能性について考えています。
AKI もうひとつの可能性? それは何? 5、4、3……ハイ、どうぞ。
哲雄 あくまで、私の仮説ですが、日本人の気質を考える上で、「オル」「イル」の文化圏と同じくらい重要な要素として、「太平洋気質」と「日本海気質」というものがあるんじゃないか――と思っているんです。
AKI それ、興味ある。
哲雄 では、その話は次回に。ところで、AKIクン、キミの出身地は?
AKI ハァ、まんず、私は秋田だども……。
哲雄 なるほど、それで……かぁ。ナットク。
AKI 何がナットクなんです?
哲雄 ヒ・ミ・ツ!
AKI エーッ、教えてくださいよォ~。
哲雄 それは、また、いずれ。じゃね。

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